Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
仕事と遊び
サト子はガッカリして、あえぎあえぎ、洞の口から澗の海へぬけだした。
泳ぎ帰る精もない。あおのけに水の上に寝て、波のうねりにからだを任せながら、いつまでも月をながめていた。
仕事と遊び
あの日は、残暑の頂上だったらしい。台風が外れ、それから四五日すると、なんとなく風が身にしみるようになった。
あの夜、サト子は海からあがると、どの部屋よりも海からへだたった、山側の叔母の寝室で寝たが、頭の下でたえず熱いまくらをまわしながら、朝まで、まんじりともしないという夜を経験した。
目をつぶると、やさしい顔をした青年のまぼろしが、ひっそりと澗の海から立ちあがってくる……
いらざる庇いたてをしたばかりに、死なせなくともすんだひとを死なせてしまったという思いで、声もあげずにベッドのうえをころげまわっていたが、夜があけると海の見えないところへ逃げて行きたくなり、その日いちにち、谷戸から谷戸へ、さすらい歩いた。翌日からは、八幡宮の境内や美術館の池のそばで、ささやかなアルバイトをしながら日をくらし、おそくなってから家へ帰るようにしていた。
「あすは、東京へ帰ろう」
サト子は裏庭の濡縁に立ち、風に吹き散らされて、さびしくなった芙蓉の株をながめながらつぶやいた。