Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
愛一郎がドアをあけて顔をだした。
「パパ、まだですか? サト子さん、お借りして、いいでしょうか」
「いいとも」
サト子はいそいそと椅子から立上ると、愛一郎と腕を組んで庭へはねだした。
日除の下のテーブルの端に、黒い紗のリボンをつけた小さな花束が一つ置いてあった。
「あの花束、なんなの?」
愛一郎は沈んだ顔つきで、
「あの席は、ぼくの誕生日に、いつも神月さんが掛けていた席なんです」
サト子は急いで話題をかえた。
「でも、カオルさん、いらっしゃるんでしょ?」
「カオルさんはパパと結婚したがっていたけど、もう、あきらめたらしい。有江さんと同じ船でアメリカへ行くんだそうです……ぼく、バカなことをしたばかりに、友だちを二人もなくしてしまった」
そこまで言うと、急に笑いだしながら松林のほうを指さした。
「暁子さん、待ちくたびれて、あんなことをしています」
むこう、松林につづく広い芝生の庭の端で、暁子が舞扇をかざしながら、楽しそうにひとりで踊をおどっているのが見えた。
ねぼけたような鶯が鳴いている。
ウラニウム爆弾だの、死の灰だの、血なまぐさい話をしたあとでは、この山の辺の静けさがなにかありがたくて、サト子は涙を落すところだった。