Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
名ばかりの垣根で、育ちのわるい貧弱なマサキがまばらに立っているだけだが、その前の芙蓉が、いまをさかりと咲きほこっているので、花の陰になって、ひとのすがたは見えない。
女ではない、たしかに男……灰色のポロ・シャツを着ているらしい。
生垣のむこうは、となりの地内だから、なにをしようと勝手なようなもんだけれど、じっと垣根の根もとにしゃがんでいるのが、気にかかる。
サト子は籐椅子から腰をあげると、座敷を横ぎって、裏庭にむいた濡縁の端まで行った。
「なにか、ご用でしょうか」
生垣のむこうから、霞んだような声が、かえってきた。
「いえ」
「あいにく、叔母はおりませんけど、あたしでわかることでしたら」
芙蓉の花むらのうえに、白っぽい男の顔があらわれた。
「どなたもいらっしゃらないはずなのに、歌が聞えたもんですから……」
いまの稗搗節を聞かれてしまった。今日はうまくうたえたほうだが、自慢するようなことでもない。
「お聞きになった? あんな歌、うたいつけないんで、まずいんです」
花のうえのひとは、ほんのりと微笑した。
「なにをおっしゃいます。あまりおじょうずなので……」
第一印象は童貞……あてにはならないが、そういった感じ。