Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
「たれかを、太鼓橋のたもとへ追い詰めたというのは?」
「あれは、食い逃げだったの。防犯に協力する精神はよろしいと、警察にほめられました」
「バカな。警察が、そんなことをいうもんですか」
叔母は、それで、ものを言わなくなった。
サト子のほうへは目端もくれず、庭の百日紅の花をながめながら、大人物の風格で悠然と朝の食事をすませると、女中に食器をさげさせた。
「あなた、あたしに隠していることがあるね?」
「どういう、おたずねでしょう?」
「あなた、あたしのベッドに寝たでしょう、おとといの晩も? そして泣いたでしょう? 枕がしっとりするほど、涙をしぼりだすというのは、これゃ、ただごとじゃないわね」
肺腑をつく、というのは、こういうときのことを言うのだろう。サト子は、いつもこの手でやられる。
叔母は、じぶんだけのためにとってある、西洋種の緑色の葡萄の皮を、手間とヒマをかけて丹念にむきながら、
「あたしは、あなたを、かわいいとも……好きだとも、思っているわけじゃない。ただ……」
「よく、わかっていますわ、おばさま」
「ただ、ここで、あなたがなにをしたか、聞いておきたいの」
サト子が、だまっているので、叔母が、うながした。