Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
「あす、東京へ帰ったら、また、目まぐるしく働かなくてはならない」
クラブへ顔をだしても、すぐ仕事があるとはかぎらない。そのあいだのいく日を、どうして食いつないで行けばいいのか。
サト子は、下の谷につづく暗い坂道を、あてどもなくブラブラ降りて行ったが、その思いが、苦になって心にのしかかり、足をとめては、ため息をついた。
石高道になったところで、空鳴りのような、もの音を聞いた。せせらぎの音だと思ったら、上の松林を吹きぬけて行く、風の音だった。
「……酔っているのかしら」
その場かぎりの会話をしたあとの憂鬱が、心にまといつき、わけもなく飲んだ白葡萄酒の酔が頭に残って、ときどき、ふっと夢心地になる。
これが生酔いというものなのか、気持の張りがなくなって、生きていくことのむずかしさが、つくづくと身にしみる。
ファッション・モデルという職業も、好きではない。この仕事に適しているとも、考えていない。期待も、希望もない。食べるだけのために、行きあたりばったりに、漂い流れている感じ……頭のなかがいそがしくて、ひとを愛している暇もない。愛されたいとも、思っていない。
モデルのクラブでは、気位いの高い、むずかしいやつだと思われているらしい。