Japanische Klassiker mit Furigana
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しじみがし
しじみ河岸
山本 周五郎
Lesen Sie しじみ河岸 (しじみがし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.438 Zeichen · 51 Bildschirme
一
一
花房律之助はその口書の写しを持って、高木新左衛門のところへいった。もう退出の時刻すぎで、そこには高木が一人、机の上を片づけていた。
「ちょっと知恵を借りたいんだが」
高木はこっちへ振返った。
「この冬木町の卯之吉殺しの件なんだが」と律之助は写しを見せた、「これを私に再吟味させてもらいたいんだが、どうだろう」
「それはもう既決じゃあないのか」
「そうなんだ」
「なにか吟味に不審でもあるのか」
「そうじゃない、吟味に不審があるわけじゃない」と律之助は云った、「私はこの下手人のお絹という娘を見た、牢見廻りのときに見て、どうにも腑におちないところがあるので、こっちへ来てから口書を読んでみた」
高木は黙って次の言葉を待った。
「それから写しを取ってみたんだが」と律之助はそれを披いた、「これでみると娘の自白はあまりに単純すぎる、自分の弁護はなにもしないで、ただ卯之吉を殺したのは自分だ、と主張するばかりなんだ」
「あの娘は縹緻がよかったな」
「読んでみればわかる、これはまるで自分から罪を衣ようとしているようなものだ」
「おれに読ませるんじゃないだろうな」
「まじめな話なんだ」と律之助は云った、「私に再吟味をさせてくれ、申し渡しがあってからでは無理かもしれない、しかしいまのうちなら方法がある筈だ、たのむからなんとかしてくれないか」