Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
六
そして、その風呂敷に一升の米を包んで右の手に、左の手には煎餅のように摺り減って二つに割れた下駄を提げ、跛を引いて帰ってきたのであった。
「遅くなってすみません」
家内は、私にいった。
「お前の左の手に提げているものなんだい」
私は、荒々しい声で問うたのである。
「割れた下駄です」
「恥ずかしい、そんなものを提げて――なぜ棄ててこないのだ」
「いえ、これは棄てられません」
「なぜ」
「これは、竈の下の焚きつけになります」
私は、これをきいて黙した。二、三年前、戦争がきびしくなって、誰もが燃料の不足に苦しんでいたころは、古下駄でも羽目板でも竈の下に焚いたけれど、物があり余った昭和のはじめ頃、割れ下駄を焚きつけに用いた家庭は絶無であったに違いないと思う。
それから家内は、赤子を背中からおろして、総領の娘に抱かせてから勝手元に立った。
温かい夕飯が、炊けた。私は、心で泣きながら、それを子供と共に食べた。
六
その夜半、私は電報々々と呼ぶ声に起こされたのである。
ハハキトクスグコイ。
と、書いてある。故郷の老母と共に暮らしている妹からの電報であった。故郷へは、ここから百五十里はあろう。