Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
愕然として、電報を手に握り、寝ている子供の枕もとをうろうろしている私に、
「おかあさんは、まだ危篤のままいらっしゃるのでしょうか」
と、家内はいうのである。
「さあ、それは分からない。だが、恐らく死んでいるのじゃないかね」
少し気持ちが落ち着いて、私は座った。
「ほんとうにお優しいおかあさんでございましたわね」
「そうだった」
「ところであなた旅費はどうなさいます」
「さあ」
「万一の時に取って置きのお金をお持ちでしょうか」
「ない」
私は、過去の生涯甲斐性なしを責める情が、一時に胸へこみ上げて、汚れた畳の上へ突っ伏した。翌朝私は、母と妹に宛てて見舞いと詫状を書いたのである。
翌日から私は、また街の掃除屋へ、うらぶれた姿で稼ぎに行った。
五、六日造ぎた日、終日働いて暗くなってから家へ帰ると、東京の親しい友人から手紙がきていた。私は、地下足袋もぬがないうちに框に腰かけたまま、それを読んだ。
前略、御健勝の由慶賀に存じ候。さりながら自今御窮迫との御事、それしきの境遇苦慮するに足らずと、遠方より御声援申上げたく候。
さて、小生は先頃より貴台の御住所を探し居り候いしが皆目判明致さず閉口致し居り候処へ図らずも貴翰到来、大いに安心致したる次第に有之候。