Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
上新田から見る五月の落日は、榛名山の西端にかかる。初夏の厚い霞を着た入陽は、緋の真綿に包んだ茶盆のように大きい。麓の遠い村々にはもう夕べの炊さんの煙が、なびいている。
西の空には、煙の浅間山が浅間隠し山、鼻曲がり山、碓氷峠などの前山を踏まえて、どっしりと丸く大きく構えている。一体、浅間山は南向きなのか、東向きなのか、前掛山は、山の中腹から南方へ向かって掛かって見える。
浅間山は、わが地方の気象台である。明日の晴雨、風雪は浅間山が最もよく承知しているのだ。日中、浅間の煙を望んで、東の空か東南の秩父山の方へ流れていれば、明日は太鼓判を捺したように晴天である。もし、煙が山肌を這って東へ降りれば、明日は強暴雨戸を押し倒すほどの浅間颪。
ところで、噴煙が火口からすぐ北に向かっていれば、明日の午後か明後日は必ず雨が到来するか、静穏な天候が一両日続くものと判断して差し支えない。だから、秋晴れの日の越後の国の空へなびく煙を眺めれば、明日の釣り道具の用意をはじめて結構だ。
なにはともあれ、浅間の壮観は、爆発直後、天に沖する大噴煙の躍動である。ドンと爆音が耳に谺したと同時に庭前へ飛びだして西の空を望むと、むくむく灰色の大噴煙の団塊が、火口から盛り上がるのを見るのである。