Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
このとき娘は座を整えて、母に向かっていった。私は、世間の人と結婚するのは、もう真っ平です。ですが、私の理想の男となら結婚いたしましょうと答えたのである。母は喜んで、そうかお前にもし理想の人があるなら、誰とでもよい結婚しておくれ――ほんとうにお前、理想の人があるのかえ。
娘は、黙している。
あるのなら、この母にだけいってご覧、遠慮はいらないよ、お前の望むところも、母の望むところも同じですもの。
娘はついに唇を開いた。あります。
どんな立派な人。
あの越後から来た炭焼男です。
あっ!
母は絶倒してしまった。
娘は、男の純情に渇していたのである。富貴、安楽、それがなに物であろう。虚偽、虚栄。それは、鬼畜よりも怖ろしい。自分は人間の純真と純情の生活のなかに、自分の姿を見出したい。それは、熊本を去ったときからの、念願であったのである。
それから間もなく、娘は唐草の風呂敷包みを一つ背負って、万太郎山の南向きの山襞に猟小屋ほどもない小さな炭焼小屋へ嫁に行った。浮世の掟通り、娘は生まれた家へ出入不叶という条件の許に、理想の人と共に暮らす人となった。
小屋の傍らには、清冽な湧き水が、岩の裂け目から走っている。