Japanische Klassiker mit Furigana
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トシオのみたもの
トシオの見たもの
岡本 かの子
Lesen Sie トシオの見たもの (トシオのみたもの) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.531 Zeichen · 21 Bildschirme
「おや、どうしたことだろう」
とトシオは、しばらくしてから、小さな拳をかためて、欅の幹をたたき始めました。
「鳴け、鳴け、小鳥」
トシオは斯う云い乍ら、どれほど叩き続けたことでしょう。けれど、何百年も経った、たくましい幹がトシオくらいな少年の拳に、何の答えをすることですか。鉄傘の様にトシオの頭の上に、堅固な手を組み交した枝の一本でも、トシオのためにゆるいで見せて呉れることですか。樹の全体は、憎らしいほど落ち付き払って、枝に残った枯葉たちは、その一つ一つ小さな背へ、やがて散る前の、最後の一時の黄金色を、思い切り太陽の光から受けて、はかな相な満足にかがやいて居ます。
トシオは手の皮のにじむまで、欅の幹を叩きつけましたが、とうとう鳥を呼び戻すことは出来ませんでした。がっかりして、拳をほぐして、平手で額の汗を拭きますと、急に躯の疲れを覚えました。トシオの小さな躯は、もう立って居ることに堪えられないほど、ぐたぐたに疲れて仕舞って居ました。トシオは思わず躯を投げ出して海の高波の様に四方へこぶこぶに太くあらわに這って居る欅の根のひとところへ、うつぶして仕舞いました。