Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
そのお艶。
あの大川の夜、身代りとして舟へ飛びこんだ莫蓮女の口では、お艶は本所の殿様とやらに掠われたとのことだったが、……どうしてるだろう? こう思うと、栄三郎はいつでもいてもたってもいられぬ焦燥に駆られて、狂いたつように、手慣れの豪刀武蔵太郎安国をひっつかんでみる。
しかしその刀と並んでいる坤竜丸を眼にするたびに、かれは何よりも先に一時斬って棄てねばならぬわが心中の私情に気がついて、卒然として襟を正し肩を張るのだった。
乾雲丸と坤竜丸!
剣妖丹下左膳は、乾雲に乗って天を翔り闇黒に走って、自分のこの坤竜を誘い去ろうとしている――それに対し、われは白日坤竜を躍らせ、長駆して乾雲を呼ぶのだ!
こうしてはいられぬ!
恋愛慕情のたてぬきにからまれて身うごきもとれぬとは! 咄ッ! なんたるざまだッ!
切り離せ! そうだ、左膳を斬るまえにまずお艶への妄念をこの坤竜丸の冷刃で斬って捨て、すっぱりと天蓋無執、何ものにもわずらわされない一剣士と化さなくては、とうてい自由な働きは期し得ない!
百もわかっている。が、やっぱりお艶のうえを思うと、栄三郎は剣を第二にこのほうへ! と心がはやる……それは情智のあらそいであった。