Japanische Klassiker mit Furigana
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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme
と、その霽れ頃に見上げるばかりに高い、大きな氷河口のまえへ出た。氷の断涯が無数の滝を垂らし、屹然とそびえている。すると、折竹が急に何を感じたのか、荷物のなかから微動計を取りだした。そしてその夕、おのぶサンにこう言いつけたのである。
「あの氷河は、じつを言うと一つのものではない。猛烈な吹雪があって積ったやつが、氷河のうえに固まって乗っているんだ。あいつが動きだすと氷海嘯というのになる。危険だ。ケプナラ君に避難をいってくれ給え」
と、その日の夜半ちかいころ。とつぜん、万雷の響を発し、地震かと思われる震動に、折竹が寝嚢からとび出した。出ると、じつに怖しいながら美しい火花に包まれた氷海嘯が、向うの谿へ落ちてゆく。よかった、予知したことがなによりだった。と、まず一安心となった。その翌朝のことだ。とつぜん一人のエスキモーの、喧ましい声で起されたのである。
「隊長、大変でがす、起きてくらっせえ。ザンベックさんはいねえし、ケプナラさんはオッ死んでいるだ」
驚いてゆくと、ケプナラは避難していない。やはり、以前の所に天幕をはっていて、みるも哀れな死を遂げているのだ。氷海嘯の端に当ったらしく鑢で切ったように、左腕、左膝から下が無残にもなくなっている。