Japanische Klassiker mit Furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme
「いいから教えておくんなさい」
宗七は、唇をわなわな震わしていた。
堀田備中守の中屋敷を訊いて、杉田屋の店を出ると、外はいつかしとしと糠のように時雨れていた。
弾正橋を八丁堀へ戻り、桜橋を渡って築地へ急ぐ、冷えて来た夜気は身にしみるようだ。袷の着流しきりだから、濡れるにしたがって寒さは骨へ徹る、……然し、宗七にはなにも感じられなかった。殆ど宙を歩くような気持で、堀田の中屋敷の門へたどり着いたときには、肩から裾までずっくりと濡れていた。
「お頼み申します」
むろん門限は過ぎている、潜り門を叩きながら二三度呼ぶと、番士が窓を明けて覗いた。
「なんだなんだ。御門を叩くやつがあるか、なんだ其方は」
「へえ、川口町の宗七と申す者でございます。是非お殿様にお眼に掛らなくてはならない用がありますので、どうかお取次を願います」
「なに、お上にお取次だと」
番士は呆れて眼を剥いた。
「ばかなことを申すな、ものを知らぬにも程がある。素町人の分際でお上にお眼通りなどと、無礼なこと申すとそのままには捨置かぬぞ」
「いえ、これには訳があるのです」
宗七は必死だった。
「私は鯉の木彫をする職人で、宗七と云えばお殿様もよく御存じの筈、決して謂れもなくお眼通りを願うのではございません。