Japanische Klassiker mit Furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
辰男だけはこの村で別家さすにしても、こことは少し離れて家を建ててやるとええ。すぐ側に親類が並んでると、よけりゃよし、悪けりゃ悪しで、嫉んだりけなしたりし合って煩さいものじゃ」
「昔は兄弟は近い処におるのがええと言うて、高松の伯父さんなぞはすぐ裏の地続きに、自分の家と間取りから柱の数まで同じい家を弟に建ててやったのじゃが、今時はそうは行かんじゃろう」と、母親は反対もしなかった。
「兄弟同士嫉むことまで考えとかいでもええがな。家の兄弟にはそんな下等な人間はありゃすまいに」
勝代は細い眉の間に皺を寄せて、「辰さんはあないな風なのに、誰もかもうてやらにゃ可哀そうじゃがな。勝は貧乏してもどこで暮らしとっても、辰さんの力になってあげにゃならん」と、昂奮した調子で言った。
「他人のことよりゃ、勝は自分の身の間違いのないように考えとれ。女子がぐずぐずして歳を取って、英語を喋舌って学校の先生になったって、何がおもしろいことがあろうぞい」才次は、眼鏡を掛けた妹の平たい顔を憐憫な思いをして見入った。
「才さんに学資を出してもらやあせず……」勝代は兄がややもすると、自分の楽しい理想を破ろうとするのが口惜しくて、こう言放って、顔を見られぬように炬燵の上に俯伏した。