Japanische Klassiker mit Furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
自分では東京へ行ってみたいとも思わんのかな」
「行けりゃ行ってもいいけど……」辰男は低い錆びた声で不明瞭な返事をして、口端を舐めずった。
「わしが東京にいる間に来りゃよかったのに。下宿屋に泊ってて電車で見物すりゃいくらも金は入らないんだから」
「勝と辰さんは電車を見たことがないのじゃから、兄弟じゅうで一番時代遅れの田舎者だ。勝は岡山まで汽車に乗ってさえ頭痛がするのに、東京まで何百里も乗ったら卒倒するかもしれんから、心配でならんがな。その代り東京へ行ったら、三年でも四年でも家へは戻らんつもりだ」
「わしの春休みの間に行くようにすりゃ、連れてってやらあ。そうしたら帰りに大和巡りもできるしちょうど都合がいいんだよ」
「いやいや、勝は一人で行こう。それくらいの甲斐性がなければ、自分の目的を遂げられませんもの」
「口でこそ元気のいいことを言っていても、途中で腹が痛んだり、汽車に酔ったりしたらどうするんだい。自分の村でさえ出歩けない者が、方角も分らない東京へ行ってマゴマゴすると思うと心細くなるだろう。東京のいい家では、つい近所へでも若い女一人外へ出しやしないよ。栄さんが帰ってきたらよく聞いてみるとええ」