Japanische Klassiker mit Furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
……この先五年十年この土地にどうして生きていられるか生きる術が見つからなかった。
白い雲の漂っている海の向うへ出て、どこともなく旅から旅を続けたらと、ふと家出を考えたが、それも一瞬間の妄想に止まって、旅費なしには一日か二日も他郷へ出かける無謀な勇気を彼れは持っていなかった。「見ず知らずの人は一椀の麦飯も食わしてはくれない。ただでは汽車にも汽船にも乗せてくれはしない」ということを彼れは今さらしみじみと考えたが、それにつけても、今まで無用な書物を買いこんで月々の俸給を浪費したことが後悔された。で、これまでの俸給のすべてを貯蓄していたらば、いくらいくらになっていたのにと、諳算をしながら、山を下って学校へ行った。
授業を終えて帰ってみると、兄は咋夕の騒ぎのために、出立を一日延していた。火事の跡始末がついていて、障子が新に張替えられ、テーブルも久しぶりで綺麗に拭われてあったが、濡れた書物は西日の差した縁側へ乱雑に抛りだされてあった。乾いて皺をつくっていた。
辰男はそれらを本箱に収めて、紙切一つ置かれていないテーブルの前に腰を掛けた。“Fire”“Conflagration”“Nonsense”などいろいろの英語が頭脳の中に黒く綴られながら現われた。