Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
「涼しいの」
小太郎が、振向いて
「この山に、一刻も、こうしておったなら、心気が、静まるであろう。死を覚悟しておりながら、いろいろの妄念に煩わされるが――南玉、見えた、あれが、義観のおるお堂じゃ。見えるであろう」
小太郎の指さす杉木立の深い中に、堂の屋根が見えていた。二人は、草の中を急いだ。
「老師」
と、縁側から声をかけた。
「誰じゃ」
寝ているらしく、畳の上から、返事が聞えた。
「仙波小太郎で、ござります」
「ああ久しいの――上るがよい」
小太郎は、荷物を置いて、脚絆をとった。そして、縁側へ、膝をついて
「ここからで、よろしゅうござりますか」
「うむ」
障子を開けると、義観は、汚い木の枕をして、詩集らしい、薄い本を、額の上へ、開いたままのせて
「よう来たのう、すっかり、よいか」
と、笑った。そして、南玉を見て
「連れか。上るがよい」
「何んとも、お礼の申し上げようが、ござりませぬ」
小太郎は、両手をついて、礼をいった。
「余り、固くるしいことをするな。何しに来た?」
「お礼のためなり、墓参のためもあり、又、牧の行方を捜すために」
「未だ、討てぬか」
「お恥かしゅう存じます」