Japanische Klassiker mit Furigana
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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
Lesen Sie 古今集巻之五 (こきんしゅうまきのご) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.482 Zeichen · 43 Bildschirme
八
主計は灸寺へ使いをやり、宿坊があいていることを慥かめて、父の滞在に必要な物をまとめた。そして、身のまわりの世話をするためには、女手のほうがよいと思って、たみを呼び戻した。主計が江戸へ立ったあと、たみは暇を取って親元へ帰り、まもなく嫁にゆくことになっていたが、今年いっぱいならお役に立とうということで、すぐに戻って来た。
明日父を送りだすというまえの夜、七時ちょっと過ぎたころに、岡本五郎太が訪ねて来た。いちど断わったが、ぜひというので、やむなく会うと、五郎太はいきなり「めめしいやつだ」と云った。
八
五郎太の眼は、怒りとも憐れみともとれる光りを帯び、袴の上の両手は固く拳を握って、いまにも殴りかかりそうにふるえていた。
「そこまで自分を卑しくして、恥ずかしくはないのか」
主計にはわけがわからなかった。
「どういうことだ」と主計は反問した。
「灸寺だ」と五郎太が云った。
「灸寺がどうしたんだ」
「たみを呼び戻し、灸寺へゆくと聞いた、これは誤伝か」
「いや、そのとおりだ」
「おれの手紙では満足できないのか」
「灸寺へゆくのは父だ」と主計が云った、「暫く慈命寺に滞在して、灸の療治をしてみたいと云うから、たみを付けてやることにしたんだ、おれも送ってはゆくが、すぐに帰るつもりだ、――いや待ってくれ、手紙というのはなんだ」