Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
「エエ、でもわざとではありませんのよ。何気なくここへ這入って来ると、あの始末でしょう。あたし、つい帰ることも出来なくなってしまって」
そういう彼女の頬にも、パッと血の色が上った。自分の為にこんな騒ぎまで起ったかと思うと、口ではさかしく応対しても、さすがに羞らわないではいられなかったのだ。
「あなたは、おかしくお思いでしょうね」
「イイエ、どうしてそんなことを」倭文子は粛然としていった。
「あたし、本当に身にあまることだと思いました」
彼女はポツンと言葉を切たまま、口を一文字に結んで、あらぬ方を見つめていた。泣き顔を見せたくなかったのだ。でも、いつしか湧き上る涙の露に、彼女の目はギラギラと光って見えた。
倭文子の右の手が、テーブルの端にソッと懸っていた。細っそりとして、しかも靨のはいった白い指。手入れの行届いた可愛らしい桃色の爪。
三谷青年は、恋人の涙に目をそらして、何気なくその美しい指を眺めていたが、いつの間にか真青な顔になって、呼吸の調子さえ乱れて来た。……しかし、彼はとうとうそれをやってのけた。思い切て、その靨のはいった白い指を、上からグッと握りしめたのだ。