Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
何かしら弾力のある、しかし綿よりはずっとかたい、でこぼこしたものが、足の下に感じられた。
あれは一体何であったのか、今よみがえった屍臭の記憶とむすび合せて考えると、ギョッとしないではいられなかった。
「でも、まさかあの井戸の中に……錯覚だわ。私の神経がどうかしているのだわ」
倭文子は、強いても、その恐ろしい想像を打消そうとした。そんなことがあるべき道理はないと思った。
やがて、屍臭とばかり思っていたのが、突然ほのかなバラのかおりとなった。と思う間に、今度は、誰かしらのみだらな体臭がにおって来る。過敏になった彼女の鼻が、幻覚を起したのだ。
その体臭は誰のものであったか。ふと情慾をそそる様なその匂いは、まぎれもなく、我が三谷青年のものだ。
併し、アア、またしても、その匂いが、突然彼女の嗅覚の古い記憶を呼び起した。それは三谷の体臭であると同時に、どこかしらの、もう一人の男の体臭でもある様な気がした。
誰だったかしら。誰だったかしら。
「オオ、そうだ。あいつの匂いだ。マアあいつの匂いだわ」
倭文子は、この恐ろしい一致に、途方に暮れてしまった。
「あれから、長い間、私はどうして、そこへ気がつかなかったのでしょう」