Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつむしあんどん

夏虫行燈

吉川 英治

Lesen Sie 夏虫行燈 (なつむしあんどん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.200 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

『ふン……後の加勢が来るあいだ、世囈い言を聞いていたほうが、其っ方に取っては、無難ではないか。――今度はお小夜に一言云おう』

と、少し膝を向けかえて、

『嗤ってくれ、おれは何という煩悩の痴人か。其女の一顰一笑を、みな自分勝手に受け取って、独りで恋をし、独りで悩み、独りで迷い、揚句の果に――又これからも、生涯独りで彷徨い出そうとしている』

『……もう……もうそんな繰り言、聞く耳はないっ。甚三郎様に罪を着せる為、盗んだ品を、これへ出して、武士らしく、そなたこそ腹を切ったがよい』

彼女は、健気に、詰め寄った。

眼にも入れない容子で、平四郎は、云いたい事を、云い続けた――

『そこで、凡痴なおれは、腹の底から、甚三郎も又其女も、恨みに思ったこともあるが、一日一日、おれの描いていたおれの幻は消え――わけても先刻、草原の中で、正直な其女の気持を聞いてからは、朝の月みたいに、恋の相手は消えてしまった。――そして唯、今も胸に残っているのは、笛吹川から抱き上げた頃の――十三、四歳のあどけない小娘だけだ。その小娘は、たとえ嗤われても、永遠におれは愛する! ……愛さずにいられない!』