Japanische Klassiker mit Furigana
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なつむしあんどん
夏虫行燈
吉川 英治
Lesen Sie 夏虫行燈 (なつむしあんどん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.200 Zeichen · 37 Bildschirme
二
二
『しまったっ。――早く、近道を登って、先を塞げっ』
市之丞は、馳けて来て、追い惑う侍たちを、叱咤した。
『うぬっ』
暁闇の大地から、不意に誰か、彼の足をつかんだ。
市之丞は、もんどり打って、
『あっ、何をいたすっ』
云わせも果てず、海野甚三郎は、彼の上へ、馬乗りになって、
『下手人ッ、召捕った』
と、呶鳴った。
市之丞は、もがきながら又、怒りの眼をつりあげて、
『ば、ばかなッ。わしを下手人とは、何を申す。――発狂したか、甚三郎』
『だまれっ。かねて不審なかどもあるにはあったが、よもや御加番の子息がと、打ち消していたのが不覚だった。――それがしを罪に墜し入れ、自滅させようと計った曲者は、確かに、汝に相違ないっ』
意外なことばに、役人や討手の侍たちも、ばらばらと駈け寄って来て、一時は、まったく甚三郎の発狂かと怪しんだが、お小夜も共に、信念をもっていうので、
『では』
と、言葉にまかせて、床下を捜すと、俵縛りに縛られた浪人の服部太蔵が引っ張り出されて、
『市之丞様、もう運の尽だ。あっしゃあ、平四郎に責められて、もうすっかり喋舌ってしまいましたぜ』
と、泥を吐いてしまった。