Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつむしあんどん

夏虫行燈

吉川 英治

Lesen Sie 夏虫行燈 (なつむしあんどん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.200 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

血まみれの中を後でよく検めてみるがよい。――猶、不審な事、分らぬ点は、この床下へ、ふん縛って突っ込んである浪人へ問い糺すがよい。――尤も、彼奴の口書は、いずれ密封の上、江戸表の評定所へ一通、御城番松野豊後守どのへ一通――各※(二の字点、1-2-22)へ二通に認めて、後から飛脚でお届けするつもり』

と、伸び上って、

『おお、後詰が来たな。――あの中には、御加番宮崎若狭守のせがれ市之丞も居ることだろう。あれも性の悪い凡痴の一人』

と、笑って又、

『お小夜どの。其女のような、あどけなくて、美しい処女は、ちょうど、夏の夜の虫を焼く絵行燈のようなもの――燈に罪はないが、焼かれる虫にも無理はないのだ。――ただ市之丞のような佞物は、焼いても飽き足らぬ佞物だが……』

もうその時、早くも、廻廊の横へ、裏手へ、

『逃がすなっ』

討手の声――そして跫音の雪崩れ、――喚き、犇めき。

――さらば!

と、云っている間もなかった。

どどどどっ……と廻廊の一角へ馳けて、ひらりと欄を越えた平四郎の影は二、三名の者を刎ねとばして、裏山の闇ふかく――いやもう小禽の声に明けかけた水色の黎明の中へ、溶け入るように紛れてしまった。