Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.629 Zeichen · 408 Bildschirme
極度に困しんで、精神も次第に恍惚となるほどだった。それでも人に扶けられて、いつものように正しくすわり直し、肩衣を着けた。それから老中を呼んで、二人の言うことを聞こうとしたが、アメリカの軍艦がまたにわかに外海へ出たという再度の報知を得たので、二人の老中も拝謁を請うには及ばないで引き退いた。翌日、将軍は休息の部屋で薨じた。
十一屋の隠居はこの話を日ごろ出入りする幕府奥詰の医者で喜多村瑞見という人から聞いたと半蔵らに言い添えて見せた。さらに言葉を継いで、
「わたしはあの公方様の話を思い出すと、涙が出て来ます。何にしろ、あなた、初めて異国の船が内海に乗り入れた時の江戸の騒ぎはありませんや。諸大名は火事具足で登城するか、持ち場持ち場を堅めるかというんでしょう。火の用心のお触れは出る。鉄砲や具足の値は平常の倍になる。海岸の方に住んでるものは、みんな荷物を背負って逃げましたからね。わたしもこんな宿屋商売をして見ていますが、世の中はあれから変わりましたよ。」
半蔵も、寿平次も、この隠居の出て行ったあとで、ともかくも江戸の空気の濃い町中に互いの旅の身を置き得たことを感じた。