Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.629 Zeichen · 408 Bildschirme
瑞見に言わせると、今度江戸へ出て来て見ても、水戸の御隠居はじめ大老と意見の合わないものはすべて斥けられている。諸司諸役ことごとく更替して、大老の家の子郎党ともいうべき人たちで占められている。驚くばかりさかんな大老の権威の前には、幕府内のものは皆屏息して、足を累ねて立つ思いをしているほどだ。岩瀬肥後も今は向島に蟄居して、客にも会わず、号を鴎所と改めてわずかに好きな書画なぞに日々の憂さを慰めていると聞く。
「幕府のことはもはや語るに足るものがない。」
と瑞見は嘆息して、その意味から言っても、罪せられた岩瀬肥後を憐んだ。そういう瑞見は、彼自身も思いがけない譴責を受けて、蝦夷移住を命ぜられたのがすこし早かったばかりに、大獄事件の巻き添えを食わなかったというまでである。
十一屋の隠居は瑞見よりも一歩先に江戸の方へ帰って行った。瑞見の方は腹具合を悪くして、寛斎の介抱などを受けていたために、神奈川を立つのが二、三日おくれた。
瑞見は蝦夷から同行して来た供の男を連れて、寛斎にも牡丹屋の亭主にも別れを告げる時に言った。
「わたしもまた函館の方へ行って、昼寝でもして来ます。