Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.177 Zeichen · 22 Bildschirme
世間並にこれを許婚といった方が宜いかもわかりません。兎も角、近いうちに結婚することまで話が進んでおりましたが、深沢深は名代の素寒貧で、アパートの四畳半に、七輪一つ枕一つの生活をしている有様ですから、急には結婚する費用もなく、結婚したところで、恋女房に食わせる当ても無かったのです。
尤もその恋人の三室銀子は、その頃漸く世に知られかけて来たソプラノ歌手で、技巧は大したもので無かったにしても、その名前の通りの銀鈴を振るような声と、伸び切ったしなやかな身体と、小娘らしい丸ぽちゃの顔が素晴らしい魅力で、その将来性は充分に約束されておりました。
この可愛らしい歌手が、三浦環の若いときのように、恥かしそうなジェスチュアで、エリザベート・シェーマンのような綺麗な声を出すので、歌の上手下手は兎も角、これを目のあたり見て、自分の耳で聴いた人は、程度の差こそあれ、誰でも一応は三室銀子ファンにならずにはおられなかったのです。
銀子は時々深沢深のアパートを訪ねて来て、その発声法や、表情や、歌の細かい技巧に就て、いろいろの意見を求めておりました。それがまた、若い恋人達にとっては、引っ切り無しに逢っている口実にもなり、お互の必要性を強調する方法でもあったのです。