Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.713 Zeichen · 28 Bildschirme
三
それはとも角として、王冠形のぺーパーナイフの柄にも、ほのかな指紋はありました。それは極めて不鮮明なもので、はっきりしたことは言えませんが、気の迷いか、亡くなった夫人由紀子の指紋に似ております。恐らく夫人が生きているころ、時々これを使ったために、夢子の胸に突っ立ったナイフの柄に偶然うらみの指紋が残っていたのでしょう。
その話を聴いた時は、さすがの小杉卓二もぞっと身を顫わせたということです。
婆やのお倉は、主人の卓二に次で念入に調べられました。
「昨日から昨夜にかけて、誰も来なかったか」
「御弔いのお客様が二三人お見えになりましたが、旦那様が御留守と申上げますと、皆な玄関でお帰りになりました」
「夢子は外へ出なかったのか」
「朝からあの嵐で、お天気になった時は、もう夕方でございました。昨夜はラジオを聴いたり、雑誌を読んだり、十時頃はいつものように寝室へいらっしゃいました」
婆やの口からも、犯人の匂いも引出せません。
三
それから半歳経ちました。
夢子を殺した犯人はそれっ切りわからず、事件は完全に迷宮に入った初秋のある日、
「御免下さいまし」
一人の若い女が、薫風の如く小杉卓二の家の玄関に立ったのです。