Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.841 Zeichen · 22 Bildschirme
四
此辺になると、阿武隈大膳正すっかり草臥て居りました。こんな泥臭いのばかりでは、どれを取ったところで変りはあるまい、いっそ籤引かなんかにしようか――そんな事を考え乍ら、ヒョイと顔を挙げて驚きました。
「フーム」
大膳正思わず唸ったのも無理のないことです。それは実に抜群の美色、咲き立ての菊の花を見るような香気馥郁たる娘姿です。
線の美しい細面、情熱的な大きな眼、わななく紅い唇、町娘らしく折屈みも尋常で、赤い袖口から出た手の可愛らしさなどは譬えようもありません。
「菊と申すか、年は幾つじゃ――即答を許すぞ、遠慮なく申せ」
大膳正思わず膝を乗り出します。
「十八に御座ります」
その恐る恐る答えた声の美しかったこと。
「紋弥、紋弥は居るか」
「ハッ」
遠慮して隣室に引込んでいた三文字紋弥は、あわてて姿を現わしました。
「あの娘に決めたぞ」
「まだ二人残って居りますが」
「いや、もうそれは見るに及ばぬ、――早速此娘の親許に申し付けるがよかろう、今夜からでも此城内へ引取るのだ、よいか」
大膳正の大変な意気込に驚いて、お菊は顔を挙げる気力もなく、唯顫えるばかりでした。
四
親に暇乞もし、いろいろ仕度も整えたいから――という口実で、お菊は漸く一と晩だけ許されて帰りました。