Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

「わかったわ、よくわかったわなつさん」

いねは溜息をつき、眼のまわりをそっと撫でながら、低い声でこう囁いた。

「あたしが女でなければ、こんな気持はわからないかもしれない、――いいわ、楢崎という方は大身のお武家らしいから、わけをよく話して頼んでみるわ、……鷹ちゃんのためにもお武家の家のほうがいい、古くから、ごひいきのお客だから、きっと承知して面倒みて下さると思うわ、――でもそうして、またあんたがいなくなったらあの方はどんなに」

「おっしゃらないで、それだけは、お願いですからもうおっしゃらないで」

おなつは耳を塞いで叫ぶように云った。

鷹二郎と床を並べて寝たのは夜半すぎであった。精之助は家のほうの支度をして、改めて迎えに来るという、しかしそのときはもうおなつはここにはいないであろう。――いねにうちあけて、泣くだけ泣いた。もうなにも考えてはいけない。なにも思わずに寝よう、こう自分に云いきかせて眼を閉じた。

かたく閉じた瞼のうちに、ふいと正二郎さまの顔がうかびあがった。どういう意識のはたらきだろう、おなつはそのおもかげに向って、心のなかで哀しく呼びかけた。

――ええ本当でしたわ。