Japanische Klassiker mit Furigana
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lesen Sie 妖虫 (ようちゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.290 Zeichen · 239 Bildschirme
そんな馬鹿馬鹿しい事があっていいものですか」
品子は我れと我が幻想を笑い消そうとした。
併し、あれは何だろう。木の枝かしら、木の枝が、あんな窓の近くにあったのかしら。
黒いガラス窓の下隅に、何かしら目触りな一物があった。
「木の枝に違いない。何でもありゃしない」
本当に木の枝かしら。それが夜風に揺れているのかしら。でも、風があんな風に動くものかしら。それは、何か生き物の意志で動いている様に見えるではないか。
その物は、徐々に大きくなって行く様に見えた。窓の下端から、スルスルと伸びて、ガラスの外を這い上って行く様に見えた。
赤黒い棍棒の様なものであった。その棍棒の尖端がパックリ二つに割れて、内側にギザギザした鋸の歯みたいなものがついていた。
品子は金縛りに逢った様に、もう身動きする力もなかった。心臓丈けが、全く別の活きものみたいに、彼女の胸の中で跳り狂っていた。
「きっと気のせいだわ。あたしは幻を見ているのに違いない」
気安めを云って見ても、彼女の直覚が承知しなかった。こんなハッキリした幻なんてあるものか。何かしら窓の外を這い上っているのだ。現にあの棍棒の様なものが、ガラスの面をこすって、キーキーと幽な物音さえ聞えて来るではないか。