Japanische Klassiker mit Furigana
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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
Lesen Sie 孫七とずんど (まごしちとずんど) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.189 Zeichen · 30 Bildschirme
、孫七郎ひとり悠々と桜の枝を折っているのだ、二ど、三ど、跳びあがり跳びあがりして、ようやく毬のように花をつけたひと枝を折りとると、かれはひどく上機嫌でそれを自分の鎧の箙へとしこんだ、そこへ堪りかねて寸度が駈けつけて来た。
「なんの真似だ、いいかげんにしろ孫七、きさまこの合戦のまん中で、ちょっ、そんなことをしていると雑兵の餌食になるぞ」
「ああ、石原寸度右衛門、おまえか」孫七はさも嬉しそうに叫んだ、「おれはおまえを捜していたんだ、ひじょうに大事なはなしがあるんだ、ちょっとそこへ掛けないか」
「突っ込め」と寸度は喚いた、「突っ込め孫七、きさま初陣だぞ、せめて兜首の一つも取らんと浜松へは帰れないぞ、突っ込むんだ孫七」
「それはわかっているよ、だが大切なはなしが……」
寸度はもういちど「突っ込め」と絶叫したまま、槍をとり直してまっしぐらに敵のなかへとびこんでいった。……孫七郎は、歎かわしいという眼でそれを見送ったが、こんどは首を捻じ向けて、箙へ※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)した桜の花枝の具合をみた、かなり満足だったのであろう、やがて手をはたき、そこに置いた槍をとりあげると、ではひとつ……といった身ぶりで前へと歩きだした。