Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
をひくくらいになった。そして時々心細い愚痴っぽい事を言っては余と美代を困らせる。妻はそのころもう身重になっていたので、この五月には初産という女の大難をひかえている。おまけに十九の大厄だと言う。美代が宿入りの夜など、木枯らしの音にまじる隣室のさびしい寝息を聞きながら机の前にすわって、ランプを見つめたまま、長い息をすることもあった。妻は医者の間に合いの気休めをすっかり信じて、全く一時的な気管の出血であったと思っていたらしい。そうでないと信じたくなかったのであろう。それでもどこにか不安な念が潜んでいると見えて、時々「ほんとうの肺病だって、なおらないときまった事はないのでしょうね」とこんな事をきいた事もある。またある時は「あなた、かくしているでしょう、きっとそうだ、あなたそうでしょう」とうるさく聞きながら、余の顔色を読もうとする、その祈るような気づかわしげな目づかいを見るのが苦しいから「ばかな、そんな事はないと言ったらない」と邪慳な返事で打ち消してやる。それでも一時は満足する事ができたようであった。
病気は少しずつよい。二月の初めには風呂にも入る、髪も結うようになった。