Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
言わば実体からぬけだした魅力の幻影だけが伍一の心の中に、どんな雰囲気にも適応のできる擬態だけで生きている女の印象をつくりあげているのであったが、それが今夜は外から来る不安のために一層肉体的に見えるのであろう。
「ねえ、ほんとにうれしかったの!」
彼女は二、三杯のビールでやっと一つの雰囲気の中におさまりかけた三人の顔へ乱れた視線をちらつかせながら、
「こんな気もちがまだ自分に残っていたのが不思議なくらいよ」
伍一は心の中で自嘲的なうす笑いをうかべたが、じっと自分を見つめている女の思いがけない真剣な表情にぶつかると不意にぬきさしのならぬ気もちに襲われ、こいつはいかんぞ、と自分をたしなめながら、もう一度百合の言葉をたしかめるために、うすくぼやけた電灯の光りの中で急にあたらしい希望にかがやきだした女の顔を見据えた。伍一は飲みさしのビールをぐっとひっかけてから、
「今夜は大へんなことになるかも知れないぜ」
「だからどうなの?」
「君たちも早くかえらなくっちゃあ」
「だって」
眼球の上にかすかに残っているかすり傷のような翳が百合の顔を悲しげな相貌につくりかえた。「まだいらっしたばかりじゃないの、もう二十分、――せめて二十分、それにいろいろはなしもあるんだけれど、何だか今夜はうれしくって仕方がないのよ」