Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
彼は、しかし想像していたよりもずっと元気でマユミと同じ蒲団の中で眠ったことがどうしても忘れられないと言い、二、三日前も七つになる妹の夢を見て、「信子!」と大声でさけんだ声を看守が部長に報告したので、「信子」という女の存在について取調べられたというようなはなしをして寂しそうな微笑をうかべた。多吉が、持ってきたアイスクリームの缶をテーブルの上において、
「どうかね、一口」
と、すすめると、彼は横の席にいた刑事の方を向いて、「どうです、吉川君」と呼びかけた。垢のしみついたワイシャツの上からうすい褞袍を着ている男が窓にもたれていたが、狡るそうな眼でちらっとうしろを振りかえると黙って立ちあがり丈吉のすすめるアイスクリームをうまそうに頬ばった。丈吉はちらっと伍一の顔を見て、
「同志の本堂君です、――二人で同じ留置場にいるんでまだ助かるんですが」
と、ささやきかけると、やっと二十五、六に見える頬骨のとがった本堂が消えるようなうす笑いをうかべた。しかし、そのまま彼は元いた窓のそばの椅子に腰をおろし、正午ちかい夏の照りつける陽ざしに乾いた下の電車みちにじっと視線を落していた。