Japanische Klassiker mit Furigana
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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Lesen Sie 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 284.014 Zeichen · 565 Bildschirme
少し怒ったような声である。私は山に登れば頂上に一泊して翌朝の大観を恣にすることに決めていたので、「そうですか、どうも……」と曖昧な返辞をして、それなら此小屋の蔭で、夜を明かそうと考えているうちに、中から蓑を着た男が水桶を背負って出て来た。そして私の風体を見てから、
「旦那はああ言ったが、わしが頼んで泊めてあげるから水を汲んで帰るまで待ってな」
と言い捨てて霧の中に歩み去った。何処まで水汲みに行くのか知らない。が、兎も角も待つことにして入口に立っていた。山の上とはいえ霧が深いので、日が暮れたように四辺が暗い。動かずにいる体が少し寒さを感じて来た頃、心あてに昵と見詰めていた方向から、水桶を重そうに背負った男の姿がにじみ出した。目で迎えた私に微笑を以て答え、小屋に入って暫く経つと首だけ出して「お入り」といわれた時には矢張り嬉しかった。
小屋の中は六畳敷程の広さで、入口に続く一畳足らずの土間の外は、床板を張って蓆を敷き、左手の炊事場に炉が切ってあった。其の近くに坐を占めて濡れた衣物を着換え、改めて奥の方の火鉢にあたっている「旦那」に礼を述べる。
「ホウ、ちゃんと用意がしてあるんだね」