Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
酉の下刻と思われる頃であった。文吉が背後から九郎右衛門の袖を引いた。九郎右衛門は文吉の視線を辿って、左手一歩前を行く背の高い男を見附けた。古びた中形木綿の単物に、古びた花色縞博多の帯を締めている。
二人は黙って跡を附けた。月の明るい夜である。横山町を曲る。塩町から大伝馬町に出る。本町を横切って、石町河岸から龍閑橋、鎌倉河岸に掛る。次第に人通が薄らぐので、九郎右衛門は手拭を出して頬被をして、わざとよろめきながら歩く。文吉はそれを扶ける振をして附いて行く。
神田橋外元護寺院二番原に来た時は丁度子の刻頃であった。往来はもう全く絶えている。九郎右衛門が文吉に目ぐわせをした。二つの体を一つの意志で働かすように二人は背後から目ざす男に飛び着いて、黙って両腕をしっかり攫んだ。
「何をしやあがる」と叫んだ男は、振り放そうと身をもがいた。
無言の二人は釘抜で釘を挟んだように腕を攫んだまま、もがく男を道傍の立木の蔭へ、引き摩って往った。
九郎右衛門は強烈な火を節光板で遮ったような声で云った。「己はおとどしの暮お主に討たれた山本三右衛門の弟九郎右衛門だ。国所と名前を言って、覚悟をせい」