Japanische Klassiker mit Furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme
「なにものッ」
豊後守が一刀をひきよせた時は、つづいて汁椀も、香のものも一汁三菜のしっそな膳までが、あやつり人形芝居の糸にあやつられたように、フワフワと宙につりあげられて、そのまま大きい部屋を、右から左へ上から下へと、おどりくるうのです。
「あれ――ッ」
ふたりの若い召使は、武家の娘ではあり、ご殿づとめで武術の心得もあり、キモもすわっておりましたが、とつぜんのできごとに仰天してわかい娘のおくびょうさにかえり、ただもうあわてふためくばかり。
その間に部屋じゅうのあらゆる物が、つぎからつぎへと宙にまいあがり煙草盆も、座布団も、床の置ものも、香炉も、花瓶も、ある種の調子をもって宙にういたまま、部屋のなかを縦横におどりくるうのでした。
「おのれ、妖怪ッ」
豊後守は刀をぬいて、八方に切りはらいましたが、さながら煙をきるようで、なんの手ごたえもなく、部屋じゅうの一さいのものは宙にとびあがって、この奇怪な空中舞踊は、ますます急速度になるだけです。
ふたりの召使女は、部屋のすみにだき合ったまま、ひとかたまりになって、もはや口もきけません。
「さわぐな、これは通り魔のたぐいであろう」