Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

げんじゅつてんまたろう

幻術天魔太郎

野村 胡堂

Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme

Aozora Bunko

ではありません。

「このうえはッ」

五、六人の若ざむらいは、力をあわせて唐紙をおしたおすと、なかは床で上にすわったままの伊豆守たったひとり、有明のあんどんが明滅するだけいままでの水や人魚、そのほか怪しいものの影も形もありません。

幻術と称する衆団催眠術はこうして悪夢のごとくさめてしまったのです。

あくる晩は、おなじ老中、阿部豊後守忠秋の番でした。若いころは、将軍家光の頭をポカンとなぐって、高慢のはなをくじいたり、大洪水の隅田川を、馬上に乗きって家光の御感にあずかったり、正直一途ではあるが、武勇のうわさ高いとのさまです。

豊後守忠秋は、そのとき朝の膳についておりました。高蒔絵の足高の膳のまえ、諸事かんそな豊後守ですが、武州忍の城主で十万石、増上寺切通しの上屋敷は、みどり深い林のなか。まことに風致ゆたかなたたずまいで、朝の小鳥が、初夏のうつくしい陽ざしをよろこんで、チ、チ、チと庭の木だちに鳴いております。

給仕女はふたり、左右にかしこまっておかわりをまっていると、

「あッ」

飯の椀が豊後守の手をはなれて、フワフワと宙にまいあがるではありませんか。

部屋のなかにいるのは、豊後守のほかには、若い召使がふたりだけ、ただもう、あれよあれよと、キモをつぶしてさわぐだけです。