Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme
「袴なんぞ構っちゃいられないんです、いま何刻ぐらいですかね、ああいけない」彼は箸を抛りだして懐中を探り、蒼くなって飯茶碗も置いて、飯茶碗は畳の上へ転げ落ちたが、彼は両手で自分の着衣をあちこち忙しく掻き捜し、やがて内ふところからくしゃくしゃになった封書をみつけ出し、ほっとしてにこにこと眼尻を下げて笑いながら、「――ああよかった、ありましたよ、無くなしたなんてことになると大将てんかんを起こしかねませんからね、どうしてあんなに怒りっぽく育ったものか、よっぽと親があまかったんですねきっと、いや飯はこっちにあります、喰べかけのをいま此処へ置いて」
「これがそうですの、お膳から落ちたので拾ってつけ替えたんですわ」
「そいつはすばしっこいですな、へええ、そいつは気がつかなかった、ああ、おじ上」
廊下の障子があいて、山治右衛門が恐ろしい顔を覗かせた。疳が昂ぶっているのを懸命に抑えているらしい、恐ろしい顔のままにこやかに笑って「ははあ食事か」と云った。泰三もあいそよく笑い返し、茶碗と箸を右衛門に見せながら「ええ食事です」と答えた。
「空腹なものですから、失礼しています」