Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おもいちがいものがたり

思い違い物語

山本 周五郎

Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme

Aozora Bunko

「あら、泰三さまがどうなすったの」

「泰三さんが勤めだして、せっかちで粗忽なことばかりやるから、それでお兄さんのほうが引立ってきたのよ、泰三さんが引立て役になったから泰助さんが幾らかましにみえてきただけよ、それだけのことよッ」

「へんな理屈ですわねえ」姉は自信満々らしくにっこりと微笑したくらいである、「――それは泰三さまがせっかちで粗忽だということにはなっても、泰助さまの御人柄がそのために認められたという証拠にはならないじゃありませんか、ねえお母さま」

「どうせでまかせですよ津留さんの云うことは、勝手に云わせておおきなさい」

「あたしの云うことがでまかせですって」

津留は憤然と坐りなおした。胸のまん中が火のようになり、頭脳がぐらぐら煮え立つように感じた。彼女はもう分別を失い、理性を逃がし、克己心のつなを切っていた。

「ようございます、それでは申しましょう、飾らずにはっきり申しましょう」津留は眼を据えて云った、「――泰三さんのせっかちや粗忽はあれはみんなわざとしていることなんです、お兄さんを引立てるために、わざとあんな粗忽なまねをしているんですのよ」

母と姉とはあっけにとられて、二人とも大きな眼でまじまじとこちらを見た。