Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme
「わたくし知っていますわ」津留は彼の腰骨の上へ膏薬を貼りながら云った、「――あなたがどうしてこんな粗忽なまねをなさるか、わたくしだけはちゃんと知っていましてよ」
「――貴女がですか、……貴女が」
「知っていますの、わたくしだけは」彼女の声は鼻が詰ったようになった、「――そして、いつも泰三さまのために、独りでそっと、そっと泣いていますのよ」
泰三は暫く黙っていた。眼を半眼にし唇を屹とむすんで、……それからやがて溜息をつき、低い声で述懐するもののように云った。
「――私のために泣いて呉れる人がいる……それだけで充分です、それだけで、……ほかの者が笑おうと馬鹿にしようと、そんなことは私には痛くも痒くもありません、一人でも自分を理解して呉れる者があれば、それで私は満足です、……本当に満足です」
「もう仰しゃらないで、泰三さま」津留はこう云って、衝動的に相手の腕へ縋り、「――津留がよく知っています、津留があなたの味方です、いいえ、津留は一生あなたのお側にいて、一生あなたをお守り致しますわ、一生、わたくし泰三さまの……」
あとは云えなかった。云えない代償に津留は彼の胸に泣きながら凭れかかった。