Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

温室咲きの白バラをしじゅう頬の近くでひらひらさせ、真理子はまるで罪人を拉致するみたいに、私の外套の袖を片手でしっかりと握っていた。

中野駅のホームに降り、私は一年半まえの冬の夜ふけ、終電を待ち、ぽつんとその人気ない駅のベンチに坐っていた自分を思い出した。長い貨物列車がごとごとと目の前をいつまでも動いて行き、私は外套の襟を立て寒さにふるえながら、混乱したみじめな気持ちでいた。保井夫婦の幸福は二人を似た顔つきにし、私は二人から閉め出され逃げるようにして帰ってきた。私はそのベンチで、しかし、ただひとつ、このことだけはたしかなのだ、としきりに思っていた。小田富子と別れたいということ、いくら説明ができなくとも、このことだけは強烈な匂いのようにたしかなのだ。

私は富子が、私の前ではいつもその孤独を忘れているらしいのが気に入らなかった。彼女はつねにやさしく、すべて私のいうがままでなにをしてもゆるしてくれ、反抗や主張やをしたことがなかった。富子にはなんの欠点もないのだ、その考えとうらはらに、でも私はほとんど動きのとれぬ習慣に化した情事のくりかえしに、新鮮さを回復することができなかった。