Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
二
時も刻まず、装飾にもならず、ただそこに置いてあるというだけの死んだ機械は、ちょうどそのひとの象徴のようなものだったが、一日中、それを睨みつけていながら、いっこうに気がつかない。世間から見捨てられてしまったとも知らずに、毎日、反り身になってぎょろぎょろしていたが、訪ねるひともない客間のソファに、なすこともなく、ぽつねんと掛けているうちに、昼夜のあまりにも長いのにうんざりし、一日ごとに消耗して、家屋接収の通知が来た朝、眠るように死んでしまった。
二
うちの賢夫人(……というのは母のことだが)と長女の千々子さまは、葬式の手続きのため、匆々、東京へ転入したが、当主たる石田九万吉氏は、現職のまま海軍民政部の嘱託にひっぱられ、農地開発の仕事でボルネオに居り、かくいう次女の百々子は、徴用で行った名古屋の工場で、冬まで寝こんでしまい、渋谷の奥のバラックの借家で、一家五人の顔が合ったのは、それからまた、半年もあとのことだった。
そうして、たいした「欠け」も出さずに、どうにかまとまりをつけたが、質は、戦前よりずっと落ちていた。
終戦直後、石田氏の勤め先きの農林省に大革命があり、復員してみたら、課長から係長に下落していた。