Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

「頭のことなんか、どうだっていいから、早く行って、きいて来い。これじゃ、風邪をひく」

「かしこまりました……それはそうと、賢夫人は、どこだ? 北の端の附書院か……こう広くちゃ、ベル・ボーイでも雇わないと、急な用事は足りません」

賢夫人をたずねて、最後に、『ケチン』といっているアメリカの台所へ行くと、賢夫人と千々子さまが、どこから仕入れてきたのか、赤錆の出た中古の電気オーヴンを、タイルの調理台の上にすえ、動力線が切られているので、壁付灯のソケットから長々とコードをひき、気取ったようすで、お台所遊びをしていた。

「おや、ご馳走ができますね」

百々子が、お愛想のようなことをいうと、賢夫人なるひとが、じろりとこちらへ振り返った。

「ちょこちょこするひとは、ここには用はないのよ」

「そうですか。お邪魔でしょう、退ります」

「今日は素直ね……せっかく来たんだから、じゃ、五十雄さんに、夕食を持っていらっしゃい」

そういって、食器の載ったアルミの角盆をおしてよこした。

五十雄君は、いぜん提灯部屋だったサン・ルームのようなところへ、この七年、医療の友だった整形用の板張りのベッドを持ちこみ、聖画の中の聖人のような顔で、ひっそりと閑居している。