Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

賢夫人と千々子さまは、サテンのワンピースにあらたまり、石田氏までがキチンとネクタイをつけている。花も実もある、いい齢をした大人達が、ご馳走ともいいにくい鰯のバタ焼きの皿の載ったピンポン台をかこみ、眼ばかりぎょろぎょろさせて、とりすましているようすときたら、泣きだしたくなるほど滑稽だった。

変りばえのしないシコ鰯でも、電気オーヴンで仕上げたというのが、ご自慢なのだろうが、こんなものは、椅子に掛けて食ってやるほどのことはない。賢夫人に睨まれるのを覚悟で、立ったままで食べてやった。

石田氏は五尺六寸という身丈で、日本人にしては胴の長いほうだが、ソファの谷にいると、鰯に箸が届かない。しきりに伸びたり縮んだりしていたが、そのうちにこんなことに精をだすのは無意味だと思ったのか、むっとした顔で箸を投げだしてしまった。

「肩が凝ってやりきれない……頭に口があるのは、磯巾着くらいのものだが、こんな恰好で飯を食うなんてのは、人間業じゃないな」

賢夫人は、箸の先に飯粒をためたまま、

「なにが、どう人間業でないんです?」

と、わかっているくせに、すました顔で聞きかえした。