Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
古びを帯びた蘆屋釜から鳴りを立てて白く湯気の立つのも、きれいにかきならされた灰の中に、堅そうな桜炭の火が白い被衣の下でほんのりと赤らんでいるのも、精巧な用箪笥のはめ込まれた一間の壁に続いた器用な三尺床に、白菊をさした唐津焼きの釣り花活けがあるのも、かすかにたきこめられた沈香のにおいも、目のつんだ杉柾の天井板も、細っそりと磨きのかかった皮付きの柱も、葉子に取っては――重い、硬い、堅い船室からようやく解放されて来た葉子に取ってはなつかしくばかりながめられた。こここそは屈強の避難所だというように葉子はつくづくあたりを見回した。そして部屋のすみにある生漆を塗った桑の広蓋を引き寄せて、それに手携げや懐中物を入れ終わると、飽く事もなくその縁から底にかけての円味を持った微妙な手ざわりを愛で慈しんだ。
場所がらとてそこここからこの界隈に特有な楽器の声が聞こえて来た。天長節であるだけにきょうはことさらそれがにぎやかなのかもしれない。戸外にはぽくりやあずま下駄の音が少し冴えて絶えずしていた。着飾った芸者たちがみがき上げた顔をびりびりするような夜寒に惜しげもなく伝法にさらして、さすがに寒気に足を早めながら、招ばれた所に繰り出して行くその様子が、まざまざと履き物の音を聞いたばかりで葉子の想像には描かれるのだった。