Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
四八
口の中は粘液で粘った。許すべき何人もない。許さるべき何事もない。ただあるがまま……ただ一抹の清い悲しい静けさ。葉子の目はひとりでに閉じて行った。整った呼吸が軽く小鼻を震わして流れた。
つやが戸をたてにそーっとその部屋にはいった時には、葉子は病気を忘れ果てたもののように、がたぴしと戸を締める音にも目ざめずに安らけく寝入っていた。
四八
その翌朝手術台にのぼろうとした葉子は昨夜の葉子とは別人のようだった。激しい呼鈴の音で呼ばれてつやが病室に来た時には、葉子は寝床から起き上がって、したため終わった手紙の状袋を封じている所だったが、それをつやに渡そうとする瞬間にいきなりいやになって、口びるをぶるぶる震わせながらつやの見ている前でそれをずたずたに裂いてしまった。それは愛子にあてた手紙だったのだ。きょうは手術を受けるから九時までにぜひとも立ち会いに来るようにとしたためたのだった。いくら気丈夫でも腹を立ち割る恐ろしい手術を年若い少女が見ていられないくらいは知っていながら、葉子は何がなしに愛子にそれを見せつけてやりたくなったのだ。自分の美しい肉体がむごたらしく傷つけられて、そこから静脈を流れているどす黒い血が流れ出る、それを愛子が見ているうちに気が遠くなって、そのままそこに打ち倒れる、そんな事になったらどれほど快いだろう