Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
橋の手前の小さな掛け茶屋には主人の婆さんが葭で囲った薄暗い小部屋の中で、こそこそと店をたたむしたくでもしているだけだった。
橋の上から見ると、滑川の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。それが向こうに行くと吸い込まれたように砂の盛れ上がった後ろに隠れて、またその先に光って現われて、穏やかなリズムを立てて寄せ返す海べの波の中に溶けこむように注いでいた。
ふと葉子は目の下の枯れ葦の中に動くものがあるのに気が付いて見ると、大きな麦桿の海水帽をかぶって、杭に腰かけて、釣り竿を握った男が、帽子の庇の下から目を光らして葉子をじっと見つめているのだった。葉子は何の気なしにその男の顔をながめた。
木部孤だった。
帽子の下に隠れているせいか、その顔はちょっと見忘れるくらい年がいっていた。そして服装からも、様子からも、落魄というような一種の気分が漂っていた。木部の顔は仮面のように冷然としていたが、釣り竿の先は不注意にも水に浸って、釣り糸が女の髪の毛を流したように水に浮いて軽く震えていた。
さすがの葉子も胸をどきんとさせて思わず身を退らせた。