Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme

Aozora Bunko

それは胸を張り裂くような犠牲だった。葉子は自分の目からも英雄的に見えるこの決心に感激してまた新しく泣きくずれた。

「どうか、どうか、……どうーか」

葉子はだれにともなく手を合わして、一心に念じておいて、雄々しく涙を押しぬぐうと、そっと座を立って、倉地の寝ているほうへと忍びよった。廊下の明りは大半消されているので、ガラス窓からおぼろにさし込む月の光がたよりになった。廊下の半分がた燐の燃えたようなその光の中を、やせ細っていっそう背たけの伸びて見える葉子は、影が歩むように音もなく静かに歩みながら、そっと倉地の部屋の襖を開いて中にはいった。薄暗くともった有明けの下に倉地は何事も知らぬげに快く眠っていた。葉子はそっとその枕もとに座を占めた。そして倉地の寝顔を見守った。

葉子の目にはひとりでに涙がわくようにあふれ出て、厚ぼったいような感じになった口びるはわれにもなくわなわなと震えて来た。葉子はそうしたままで黙ってなおも倉地を見続けていた。葉子の目にたまった涙のために倉地の姿は見る見るにじんだように輪郭がぼやけてしまった。葉子は今さら人が違ったように心が弱って、受け身にばかりならずにはいられなくなった自分が悲しかった。